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美容のあれこれ~その72~

新宿で営業している時だった。
午前中の訪問を終えて、どこかで昼飯を摂ろうと考えていた時、突然雷鳴が轟いたのだ。
驚いて空を見上げると真っ黒な雲が迫ってきており、ヤバイと感じてすぐそばの本屋に駆け込んだ。
大粒の雨が落ちてきたのはその瞬間で、ほどなく外の景色もかき消されてしまった。
これは雨が止むまでは外に出られない。
ここ数日幾分過ごしやすい気候が続いていたのが雷と共に一気に気温が下がったのか、うっすらと寒気を感じてきた私は、本屋に併設されているカフェに飛び込んで温かいコーヒーを頼んだ。
頭の奥が鈍く痛む。
スマートフォンで営業の報告を済ませた頃には、自分でもマズいと感じる位具合が悪いという自覚があった。
急激に降ってきた雨は唐突に止んで、私は会社に連絡を入れて休みをもらう。
風邪をひいたのかもしれなかった。
目に付いたドラッグストアで薬を物色する。
風邪薬も色々あるけれど、漢方系の物から選んでいく。
以前新薬で発疹が出たことがあるので、医者の処方薬以外で口にするのはこうした漢方薬だけだ。
漢方は自分の身体の力を引き出して、自然にあるものの力を借りて身体の弱っている部分を癒していくもの。
新薬は効果があるのかもしれないが、化学成分で弱っている部分に作用するもの、自分の中ではそんなイメージがある。
「熱、寒気」と書かれた漢方薬、お湯を注いで飲むビタミンC豊富な柑橘系飲料、レンジでチンで食べられるお粥をいくつか選んで、レジに向かった。
独り暮らしは、こういう時に寂しさを味わう。
お湯を沸かしてチン出来る間、ベッドサイドに薬やスマートフォン、ホット飲料を飲むための湯呑みを用意しておく。
お粥の夕食を食べ終わったら、すぐにベッドにもぐりこむのだ。
ティッシュボックスも傍に置いておく。
具合が悪くなっても誰かが助けてくれるわけではないのだから。
食事を済ませてホット飲料を飲んでいるうちに、身体の芯が温まってくる。
雨は止んでいたが、遠雷の音が聞こえている。
たった一人だけれど温かい部屋の中にいて、何かに守られているみたいだ。
薬を飲んで、私はベッドにもぐり込んだ。