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美容のあれこれ~その81~

子供が家を出て行ってから、家の中は火が消えたように静かだった。
東京での生活に慣れるまではそれでも何度か連絡があったものの、最近ではうんともすんとも言ってこない。
元気でやっている証だとは思うけれど、それはそれで淋しいものだった。
主人と2人の生活には馴染んだけれど、特に会話があるわけでも共通の趣味があるわけでもなかった。
熟年離婚を決意する主婦の気持ちが、少しだけ理解出来るような気がする。
「何だか気分が晴れないのよね、毎日毎日。
うつ病になっちゃうんじゃないかと思う位」「だんな様とは、上手くいってるの?」友人が心配そうに私の目を覗き込む。
「うーん、あの人は日中いないしね。
夜も夕食が済んだら、お風呂に入って先に眠ってしまうし。
会話はないわね」友人のところは2世帯だから、それでも何やかやと賑やかで、忙しいはずだ。
家のように2人っきりではないから。
「更年期障害かしらねぇ」友人がポツリと呟いた。
「お母さん、元気?」そんなある日、久しぶりに息子が電話をかけてきた。
午前中のバイトが済んで、これから講義を受けに行くのだという。
「頼みがあって、電話したんだ。
明日は授業がないから、家に戻っていいかな?」「何?頼みって何よ?」電話は切れていた。
とりあえず、主人にそのことを話す。
「午後は休みをもらうから、俺が帰るまではいるように伝えておけ」それだけ言うと、自室に戻って行った。
息子は思っていたよりも早くやって来た、お供を連れて。
「こいつの面倒を見て欲しいんだ」こいつというのは薄汚れた猫だった。
バイト先のゴミ置き場に生き倒れていたのだという。
なるほど汚れているだけではなく、ガリガリに痩せている。
「とりあえず夕べは猫缶食べさせたんだけど、動物病院で一度診てもらいたい」ということで、息子と2人で動物病院へ。
幸いなことに病気などはなく、推定5才位ということだった。
ドラッグストアにも寄って、カリカリやブラシを買い込んだ。
ふと「更年期障害」という言葉を思い出して、漢方も買い込んだ。
だって私の調子が悪かったら、猫の面倒もみれやしないから。